さまざまな試みで“野球に対する考え方”を育てる 今回のトライアウトが選手たちにもたらしたモノ

December 3, 2017

 野球というのは、ところどころに間合いが生まれるスポーツだ。だからこそ、その時間をどう使うかが重要でもある。周囲をよく観察し、置かれている状況を把握し、その先に起こり得るプレーを想定する。もちろん、パッと動けるように体も準備しておく。そうすることで瞬時に状況を判断し、より確率の高いプレーを選択できるようになる。

 橘田恵監督が今回の代表チームに求めるのも、まさにその部分。指揮官を支える木戸克彦ヘッドコーチも「頭を使って考えて、うまい野球をするなぁというのは日本の野球選手の良さ」と語り、さらにこんな想いを明かす。

「男子と比べると、女子はどうしてもパワーやスピードが足りなくなってしまうんだけど、そもそも欠点を持っていない選手なんていない。だから自分たちの持っている力を踏まえて、こういう野球をしたらいいんじゃないかって考えていくことが大事。みんな取り組み方はすごくいいし、素質も持っている。まだまだ伸びしろがあるなと感じますね」

 精鋭95名が参加し、計4日間(関西と関東で2日間ずつ)で行われたトライアウトは12月3日、関東会場にて全日程を終了。東西とも、1日目の終了後には“翌日までの宿題”として、選手たちに1枚のプリントが配布された。内容は「初回守備の無死一塁」「最終回守備でスコアは0対0、二死一・三塁で1点もやれないケース」など、具体的な8つの場面における守備のフォーメーションとその説明、さらに他に想定されるケースも記述する、というもの。また2日目の試合形式の練習では、各打者が自分なりに攻撃の方法を考え、走者にサインを出していった。こうした取り組みには、指揮官のこんな意図が込められている。

「プリントに関して言うと、何が正解というものはありません。ただ、この場面ではこの方法が最も確率が高いだろう、と考えられるものを選択していけるかどうかが大事だと思っているので。自分で考えてサインを出すことについても、それぞれの持ち味を出してほしいのと同時に、守備側が何を想定しているかまで考えてほしいという想いもあります。相手のことを度外視して自分の野球を貫くことも大事だとは思うんですが、相手を見るということもすごく大切だと思うし、いかにそこにトライしているかどうか。なんでこの作戦を取ったのかと聞いたときに、ちゃんと理由を説明できるかどうか。そういう会話が成立して、野球を語っていけるようになることが日本代表として大切だと思うんです」

 ならば、選手たちはその試みをどう受け止めたのか。

 関東会場でトライアウトに参加した過去2度の代表歴を持つ出口彩香などは、「1日目と2日目で意識が変わった」と語る一人だ。

「時間があるときにじっくり考えればいろいろな案が出てくるんですけど、結局はプレー中にしっかり頭を回転させて、一瞬でパッと頭に浮かんでくるようにしなきゃいけない。そういう意味でも、宿題をしたことで『あっ、こういうことも考えられるよな』と考え方を復習することもできましたし、2日目はそれを頭に入れながらプレーできたかなと。あと守備なら打順や走者の走力、他の野手の特徴なども考えて微妙にポジショニングも変わってきますし、攻撃においても、どんなチームが相手でも同じ作戦をするというのではダメだとも思う。だから、いかに周りを見るか。さらに、自分だけがそれを分かっていてもダメ。最終的には、その場面で全員が同じことを考えていなかったら、同じ動きができないと思うんです。だからチームというのは、野球の考え方の部分まで一緒にしていかなきゃいけない。そのためにも、コミュニケーションを取って考えをどんどん伝えていくことが大切なのかなと思いました」

 さらに、前回(2016年)のWBSCワールドカップで代表入りしている船越千紘もまた、意識の部分での変化を語る。

「前回は自分の力を発揮することができましたが、それは周りの方々がいい雰囲気を作ってくれたおかげ。ただ、代表を1度経験したことで結果どうこうよりも自分の持っている力を出そう、できることをやろうというふうに考えられているし、攻撃ではバントをしたり足を使ったりと、動いていく部分が重要になるというのも学べました。そして今回のトライアウトでは、考える野球を重視しているんだなというのはすごく伝わってきましたね。捕手なので日頃から常に考えながらプレーはしているんですが、宿題などによって『守備位置の指示をもっと出さなきゃいけないな』とか『こういう声掛けもしていこう』と気付くこともできた。考え方を再確認できたので良かったです」

 そんな選手たちの変化も目の当たりにしながら、「今回選ばれるかどうかだけじゃなく、将来的に指導者になったり野球に携わっていく選手もいるかもしれないわけだから、しっかり考えられるようになってほしい」と柔和な表情で語る橘田監督。今後もさまざまな工夫を凝らしながら、野球選手としての成熟度を高めさせていくつもりだ。

 

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